電力各社、LNG争奪戦 原発停止で火力シフト 価格高騰、収益圧迫も
産経新聞2011年5月22日(日)08:00
東日本大震災で被災した東京電力福島第1、2原子力発電所や東北電力女川原発などに加え、中部電力の浜岡原発が政府の要請で停止し、各地で定期検査後の再稼働も滞るなか、電力各社が代替火力発電用の燃料調達を急いでいる。ただ、火力の主流となっている液化天然ガス(LNG)は世界的に需要が急増し価格も高騰しており、争奪戦の激化で安定的に調達できなくなる懸念が出ている。
被災による原発停止を受け、東電と東北電は早い段階からLNG調達に着手。4、5月にかけてインドネシアから東電向けに3隻、東北電向けに4隻のLNG船が出港した。同国政府から申し出を受けた資源開発大手の国際石油開発帝石が、調達を仲介した。
東電では、「電力需要がピークを迎える夏場の必要量を手当てできた」としている。中部電も、政府からの停止要請直後に三田敏雄会長が0泊3日でカタールに飛び、LNG確保の協力を取り付けたほか、政府も支援を確約している。
一方で、定期検査が終了した玄海原発2、3号機について、地元の同意が得られず、夏場の再稼働が困難になった九州電力の真部利応社長は、「7月中旬以降の燃料調達の見通しがたっていない」と窮状を訴える。東電、東北電に加え、中部電が大量調達に動いたことで、「厳しくなった」という。
最新の火力発電所はほとんどが、燃料に二酸化炭素(CO2)の排出量の少ないLNGを採用。平成21年度実績で国内の発電量のうち原発の約29%を上回る約31%を占めている。これに対し、石油は約6%、石炭は約25%にとどまり、夏場の電力供給不足を乗り切る上で、LNGの調達がカギとなる。
ただ、LNGは20年間などの長期契約が中心で、追加的に調達するスポット取引は限られており、「もうほとんど余分はなくなった」(国際石油開発帝石)とみられている。
石油火力用の重油についても供給に制約がある。コスモ石油や富士石油など石油元売り会社は重油の供給量を引き上げる計画だが、原油の精製工程では、重油だけを生産するのは不可能で、ガソリンや軽油も同時に生産される。
景気悪化でガソリン需要は低迷し、「重油を増産すると、ガソリンが供給過剰になる」(JXホールディングスの高萩光紀社長)との声が出ており、どこまで電力会社の需要に応えられるかは不透明だ。
石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之上席エコノミストは、「不安定な中東情勢やドイツの脱原発なども重なり、LNGや原油の価格上昇が懸念される」と指摘しており、電力各社の収益をさらに圧迫するのは避けられない。